心地よいデスク環境を構築したい
安心感のある部屋にしたい
デスク周りはプライベートな空間ですから、心地よさや安心感を求めるのは自然なことです。
「心地よさ」「安心感」の感じ方は人それぞれですが、一般論として応用できる考え方があります。
それが「眺望−隠れ家理論(prospect-refuge theory)」です。
「眺望−隠れ家理論」とは
人間は無意識のうちに「眺望」と「隠れ家」を両立できる景観や場所を求める、という理論です。
「眺望」とは周囲を見渡せること、「隠れ家」とは自分の身を守れること。
高台や丘の上などの環境は、かつて狩猟民族だった人間にとって、狩猟をするにも敵から身を隠すにも有利でした。人間は本能的にこの環境を「居心地がよい」と感じ、求めるとも言われています。
人文地理学者であるJ・アップルトンが、『The Experience of Landscape(景観の経験)』という著書の中で提唱した理論。1975年なので、意外と最近の話なのは驚きです。
「眺望」とは
「眺望」とは、周囲を見渡せること、より広い範囲を監視できることです。
かつて狩猟民族だった人間にとって、「眺望」の良い環境は、獲物やそれを奪おうとするライバルを発見しやすい場所として重要でした。
「隠れ家」とは
「隠れ家」とは、自分の身を隠せる場所、周囲からの視線を遮れる場所のことです。
「隠れ”場”」と呼ぶこともあるようです。いずれにしても、「refuge」の訳語です。
「隠れ家」的な環境は、危険な動物やライバルに襲われそうになった時、身を隠す場所として重要でした。
「眺望」と「隠れ家」を両立できれば、身を隠したまま周囲の様子を伺うことができるので、落ち着いた、安心できる環境となります。
「眺望−隠れ家理論」の事例
身の回りでは、意識してみると様々なところで「眺望−隠れ家理論」を見出せます。
匿名のSNS
匿名で利用できるSNSは、アイコンやニックネームで「身を隠し」ながら、他の人の投稿を「閲覧する」ことができます。利用者がどんな人か、子どもであるかどうか、外部から知ることは難しいです。
あまり良いことではありませんが、他人を批判・攻撃するような投稿が起きやすいのも、眺望−隠れ家理論の副作用かもしれません。
眺めの良い展望台やレストラン
ビル上層階のレストランや展望台などです。
周囲を見広く見渡せる環境は「眺望」の最たるものです。そもそも屋内ですし、地上から展望台の中を見ることは容易ではないので、「隠れ家」として機能します。
高いお金を払ってでも、わざわざ展望台やレストランを訪れる人が絶えないのは、そこにそれだけの価値があるからです。
飲食店の端の座席
日常的なところでは、飲食店の座席が挙げられます。例えば、カウンター席が並ぶカフェやラーメン屋。
端の席は、片側を向けば店内を見渡すことができる点で「眺望」を得られます。また、真ん中の席よりは目立ちにくいため「隠れ家」的です。
無意識に端っこの席に座ってしまう現象は、眺望−隠れ家理論で説明できるかもしれません。
デスク周りの「眺望−隠れ家理論」
モガクの個人的な考えですが、「眺望−隠れ家理論」はデスク配置にも応用できると思います。
窓の外を眺める配置
窓に向けてデスクを配置することで、屋外に対する「眺望」を確保できます。また、屋内は基本「隠れ家」なので、まさに「眺望」と「隠れ家」の両立です。
マンションの上層階や、庭のある一軒家など、眺めの良い部屋に最適です。
一方、窓の前が人通りの多い通路や、隣家の窓になっていると、むしろ外からの視線が不愉快に感じられることもあります。これはデスク環境が「隠れ家」にならないからです。
そんな時は、少しデスクをずらして壁に隠れる配置にすると「隠れ家」として機能させることができるでしょう。
部屋を見渡せる配置
部屋全体を見渡せる配置も、屋内に対する「眺望」が良いといえます。その場合、部屋の端や隅に座ることになるので「隠れ家」的なスペースが生まれます。
一人暮らしならあまり関係ないかもしれませんが、家族と同居している場合、子育て中の場合などは室内に対する眺望が重要です。
例えば、子育て中なら、デスクに向かいながら子どもたちの活動を見渡せるようになります。子どもたちも、自分の顔が見えて安心です。
もちろん、一人暮らしで試しても面白いと思います。
他の配置も
もちろん、この記事で紹介したのは「心地よさ」「安心感」を重視する場合のデスク配置の考え方です。
重視するものによって、考え方を変えても良いと思います。
例えば、「目の前のことに集中したい」場合は、余計な情報が視界に入らないように、壁に正面を向く配置が考えられます。