「片手で全てを操作したい」
極度のめんどくさがり屋の私は、片手だけで文字入力&ポインター操作ができるキーボード兼マウスが欲しいと思いました。
※この記事も片手で執筆しました
有名片手キーボードといえばFroggyだが、ポインターを操作できない
片手キーボードというと、Froggyという有名なデバイスがありますが、Froggyにはポインターを操作する機能がないので、別途マウス等を用意する必要があります。
しかし、「片手で全てを操作したい」というコンセプトに反してしまいます。
そこで、「Froggyにトラックボールが付いたキーボードを自作したい」と思うようになりました。
そんなとき、ふと「Keyballを片手運用したらよいのでは」と気づいたことが始まりです。
Keyball でキーマップを変更すればいい
片手キーボード界で最も有名なのは先述の「Froggy」というキーボード。
母音が人差し指の可動域に集中する効率的な配置ですが、次の点は自分の求めるものと違っていました。
- 英語入力が前提で、日本語入力(ローマ字入力)のキー使用頻度には最適化されていない
- マウス・ポインター機能は備わっていないので、別途マウス操作が必要
その点、Keyball でキー割り当てを変更すれば、可能な限り違和感の少ないキー配列を模索することができます。
ということで、究極の片手デバイスを目指すべく、キー配置を探っていきます。
簡単にキー配置を変更できる「Remap」に大大大感謝です。
今回はKeyball シリーズの中で最もキー数の多いKeyball61を使用します。
キーを決める
Keyball61の場合、トラックボール側には29キーしかありません。
29キーで全てを操作するためには、キーに優先順位をつけ、使用頻度の高いものだけをデフォルトのレイヤーに配置するのが良いでしょう。
一方、使用頻度の低いものはその他のレイヤーに忍ばせる必要があります。
では、どうやって優先順位をつけるか。次の方法を考えました。
方法1│かな入力頻度調査を参考にする
下記は、Google検索でキー入力頻度について調べた中で、個人的に最も参考になったサイトです。
母音×子音で仮名の出現頻度を調査されたもの。調査ベースが日本語によるメールの文章だという点も大変参考になります。
これによると、次のようなことが分かります。
- 母音(a, i, u, e, o, y)は総じて出現頻度が高い
- 子音のうち、K, S, T の出現頻度が特に高く、準じて、N, R, M, D の出現頻度も高い。その後、H, G, Z, W …と続く
ここから、母音&出現頻度の高い子音を優先する、という大方針を決めました。
方法2│用途から逆算する
自分の場合、片手運用の主な用途として、次を想定していました。
- 簡単な文章入力
- タブを閉じる等のウィンドウ操作
- Word、Excel、PowerPointの簡単な操作
- YouTubeなどのコンテンツ視聴
この用途から考えると、
- 「、」「。」「ー」
- Enter、BackSpace(改行・削除)
- Ctrl、Shift、Alt、Win(諸々操作)
- Tab(Excelでのセル移動)
- Space(変換)
といったキーは使用頻度が高いため、できるだけデフォルトレイヤーに残しておきたいです。
キー配置を決める
キーの優先順位が決まったら、次はそれらをどのように配置するかを決めていきます。
すぐ慣れるキーボードにしたい
今後いっさい片手キーボードだけを使うというわけではありません。
あくまでメインは通常のキーボード、たまに片手キーボードを使うという位置付け。
そのため、この片手キーボードを使う時も、他のキーボードを使う時も、できるだけ認知コストがかからない自然な配置を目指します。
優先順位の高いキーの可視化
まずは、先ほどの出現頻度(+個人的な微調整)に基づき、優先順位の高いキーを残してみました。
写真から、優先順位の高いキーは、どちらかというと右手側に偏っていることがわかります。
今回は右手運用を前提とするため、右手側の配列を極力崩さず、その隙間に左手側のキーを差し込む方針としました。
右手と左手の足し合わせ方2パターン
左手側のキーの差し込み方で分類し、2パターン試しました。
パターン1│平行移動して足し合わせる
左手キーボードから、そのまま平行に移動して足し合わせるパターン。記号で表すと「⇄」のイメージです。
「Aが一番左の列」などキー位置を視覚的に把握しやすい一方で、母音が人差し指に集中し、打鍵速度が遅くなったり、タイプミスが増えたりするデメリットがありました。
パターン2│反転して足し合わせる
左手キーボードを反転する(畳み合わせる)パターン。記号で表すと「⊂」でしょうか。
「Aが小指」など、左手と対称的な動きで入力できます。S-A-Zの並びがそのままスッポリ収まるのも気持ちいいです。
一方で、通常のキーボードとは視覚的な位置が大きく異なるので、認知コストはやや高めかもしれません。
パターン2をベースに改良
パターン2をしばらく使用してみると、日本語で多用する「~だ」「~で」「~を」「~が」がかなり打ちづらいことが分かりました。そこで、次のように改善しました。
- 「D」を、人差し指のホームポジションに移動
- 「G」を、左下突起部に配置
- 「W」を、「O」の直上に配置(代わりに「B」をレイヤー1に移動)
これにより、かなり使用感が改善されました。特に「を(WO)」を薬指の1ストロークで打てる点が良いです。
また、パターン2(反転)であれば、左手バージョンも同様の考え方で作れるのではないかと思います。
キーマップはこちら
各レイヤーのキーマップは下の写真の通りです。
探っている途中なので、もっと良いアイデアがあればぜひ教えてください。
なお、ファームウェアはかみだいさん(Twitter:@d_kamiichi)が公開されているものを使用させていただいています。便利なファームウェアをありがとうございます。
便利な場面、不便な場面
特殊な片手運用なので、当然、便利な時とそうでないときがあります。
ポインター操作中心のときは便利
「キーボードのついたトラックボールマウス」みたいな位置づけで考えれば、かなり便利なデバイスだと思います。
- 左手フリーなので、電話をしながら、コーヒーを飲みながら、頬杖をつきながら、スマホをいじりながら基本的なPC操作ができる
- 横向きに寝ながらでも文字入力ができる
- CPI(Counts Per Inch)やスクロール除数をすぐに調整できるマウス
文字入力のスピード・量が求められる場面には向かない
Wordやテキストエディタへの文字入力においては、両手キーボードの方が間違いなく便利です。
指5本と10本であれば、10本の方が早いのは当たり前。自分の文字入力スピードの遅さに、段々イライラしてきます。
とはいえ、あまりタイピングが早すぎると思考スピードが追い付かず、手書きの速度の方が頭が働くとも聞くので、それはそれで良さだと捉えることにしています。
あとは、長時間使用していると、結構右手が疲れます。こればかりは仕方がないです。エルゴノミクス的観点を優先するなら、おとなしく両方使いましょう。
片手デバイスという選択肢があることが大事
場面に応じて便利なデバイスを使い分ける、といえば当然ですが、この選択肢は無駄ではないはずです。
上述のシチュエーションに加えて、片手をけがしてしまった時などにも、この片手デバイスは真価を発揮するでしょう。
私は両手を前に出してずっと同じ姿勢をしているのが得意ではないため、姿勢を変えやすいという意味でも案外重宝しています。
結論|ニッチな場面で活躍する可能性あり
この記事の問いは「Keyball61はキーボード+マウスの完全片手デバイスになり得るか」でした。
メリットもデメリットもあるため、完全無欠なデバイスとは言えないかもしれません。
でも、完全なデバイスなんて存在しません。
アイデア次第では活躍してくれるかもしれません。
そんな場面をいくつか。
「コーヒー片手に」スタイル
リラックスしながらちょっとした作業をしたいときに。
コーヒーに限らず、カフェオレでも、コーラでも、好きな飲み物を嗜めます。
「スマホ片手に」スタイル
電話しながら調べもの、スマホとPCの見比べなど、たまにあるシチュエーション。
こんな時でもスマートに対応できます。そう、片手keyballならね。
「読書しながら」スタイル
読書をしていると、「この言葉どういう意味だっけ」「この場所どこにあるんだろう」「あの本なんだっけ」と疑問が次々出てくるのは私だけでしょうか。
辞書機能ならKindleに搭載されていますが、意外と辞書に載っていないこともあるので、片手で調べられるのは意外と便利です。
(スマホだとSNSとか開いてしまうので、気が散りやすい私は読書が止まってしまいます。)
追記|簡易な無線化を試み中
キーボード自体はいじらなくても、無線化(Bluetooth化)できる便利な機器を発見しました。
USB2BT PLUS というものです。Bluetoothのバージョンが低いのが玉にキズですが、テキスト入力程度なら使用感は問題なく、意外と安価。
薄型のモバイルバッテリーと、短いUSBケーブル、アダプターで、極力ミニマルにしているつもりです。
そのうちBLE Micro Proでの完全無線化も試みようと思っています。