「マルチタスクが苦手…これはHSPだから?」
「頭が真っ白になって、何も手につかなくなる」
安心してください。人間はそもそもマルチタスクが苦手な生き物です。
でも、「一つの仕事しかやりません!」なんてなかなか言えないのが世の常。
今回は「人は皆マルチタスクが苦手だ」という前提で、どうしたら苦手さを軽減できるか、を考えます。
前提→症状→原因→対策の順で解説します。
【大前提】そもそも人間は皆マルチタスクが苦手

「マルチタスクすれば効率アップできる」はそもそも間違いです。
なぜなら、HSPに限らず、人間はマルチタスクをすると処理能力が落ちるから。
しかし、その処理能力の落ち方は人によって違います。
処理能力をほとんど落とさない人と、著しく落ちる人。この違いが「マルチタスクができる/できない」という自認の差になるのです。
処理能力があまり低下しない強者もいる
「やることが複数ある」という状況でも、処理能力があまり落ちない人もいます。
なぜなら彼らは、複数のタスクを冷静に一つずつこなせるからです。
彼らは、人間がこなせる仕事は一度に一つだけということを理解し、実行しています。
その結果、処理能力の低下を最低限に抑えられるのです。
処理能力の低下が激しいHSP
一方、HSP傾向のある人は、マルチタスクを目の前にすると処理能力がガクッと下がります。
多いのは、「やることが複数ある」「あれもこれも」と混乱し、タスク量を過大に評価してしまうパターン。「もう無理だ」と絶望的になり、処理能力が落ちてしまいます。
処理能力の低下が激しいので、「マルチタスクは苦手」という自認が強くなってしまうのです。
シングルタスクの連続に落とし込む
つまり、処理能力を落とさないためには、マルチタスクをシングルタスクの連続に落とし込む必要があります。
理由はやはり、人間は一度に一つのことしかできないから。
でも「シングルタスクの連続ができないから困ってるんだ!」というのがHSPの本音。
まずは症状を分解し、原因を把握して、自分に合った対策をとりましょう。
マルチタスクの3ステップ
- ステップ1タスクへの着手
- ステップ2タスクへの集中
- ステップ3別のタスクへの切り替え
マルチタスクは、シングルタスクの連続です。シングルタスクの連続は、「タスクへの着手」「タスクへの集中」「タスクの切り替え」の3つステップに分解でき、その繰り返しと考えられます。
ステップ1|タスクに着手する
何はともあれ、タスクに着手しなければタスクは減りません。減らないどころか、増えることもあります。
スタートラインに立っているだけでは、いつまで経ってもゴールできないのと一緒です。
とはいえ、先々の心配や周辺環境など刺激が多い状況では、なかなかタスクに着手できないのがHSPの特徴。
タスクに着手できない原因はこちら
ステップ2|タスクに集中する
タスクを完了するには、着手したタスクに集中する必要があります。
でも、つい他のタスクや周辺環境が気になってしまい、集中・継続できないのがHSPの辛いところです。
タスクに集中できない原因はこちら
ステップ3|タスクを切り替える
一つタスクが終わったら、次のタスクに切り替えてまた着手する必要があります。マルチタスクならではのステップです。
スムーズに切り替える、もしくは適切な休憩をとる必要があります
タスクを切り替えられない原因はこちら
各ステップで起こるHSPの症状とその原因
以降、各ステップで起こり得る、HSP的な症状、原因、そしてその対策について、順番に解説します。
症状1|なかなかタスクに着手できない
- ステップ1タスクへの着手
なかなかタスクに着手できない
- ステップ2タスクへの集中
- ステップ3別のタスクへの切り替え
ステップ1「タスクへの着手」が苦手だと感じる人も多いでしょう。私は最も「着手」が苦手です。
なぜタスクへの着手ができないのか、その原因を分解して考えます。
原因1-1|最優先のタスクが分からないから
一つ一つのタスクや情報に対して敏感なHSPは、すべてのタスクが同じくらい重要だと思う傾向があります。最初に手をつけるべきタスクが定まらないので、いつまでもアタフタしてしまうのです。
原因1-2|先読みばかりして1歩目が出ないから
一つ一つのタスクに対して、先の先まで心配しすぎてしまう結果、なかなか手を付けられないパターン。例えるなら、マラソンを走る前からゴールの心配をしすぎて、なかなか1歩目を踏み出せないようなもの。
もちろん先読みは悪いことではありませんが、過剰になると行動できない原因となります。
症状2|着手後、気が散ってしまう
- ステップ1タスクへの着手
- ステップ2タスクへの集中
他のタスクや周辺環境に気が散ってしまう
- ステップ3別のタスクへの切り替え
ステップ2「タスクへの集中」ができない原因を考えてみましょう。
原因2-1|ゴールが決まっていないから
タスクのゴールが不明確だと、いつタスクを終了すべきか分かりません。いつ終わればいいか分からないので、「そろそろ別のタスクを…」と気になってしまうのです。
原因2-2|気が散る環境にいるから
どんなに仕事の中身が整理されても、デスク周りや仕事環境が整っていなければ、気が散る原因となります。例えば、事務用品が散乱していたり、他のタスクの資料が開いていたり…。
またHSPにとっては、上司や同僚・部下の存在自体が、気が散る原因ともなり得ます。さらに、照明や匂い・空調が不快だと、なおさら集中力は散漫になるでしょう。
症状3|タスクの切り替えが下手
- ステップ1タスクへの着手
- ステップ2タスクへの集中
- ステップ3別のタスクへの切り替え
タスクの切り替えをスムーズにできない
ステップ3「別のタスクへの切り替え」はシングルタスクの連続(=マルチタスク)ならではといえます。これが難しいと感じる原因を考えてみましょう。
原因3-1|タスクの優先順位がないから
タスクの優先順位がないと「次は何をすれば良いのか」が分からず、無駄な時間だけが過ぎてしまいます。例えば、紙芝居やスライドショーでも、出す順番が決まらなければ「次はどれを出すべきか」と迷ってしまうでしょう。逆に、順番さえ決まっていれば機械的に処理できるものです。
原因3-2|休憩を上手に取れていないから
適切な休憩を取ると、上手にタスクを切り替えることができます。なぜなら、人間は機械ではないからです。とはいえダラダラと休憩するのも良くないので、あくまで「上手に」取れるよう工夫が必要です。対策で解説します。
マルチタスクが苦手なHSPがとるべき対策とテクニック
症状と原因を確認できたら、具体的な対策をとりましょう。
対策|タスクを分ける

まずはタスクを分けるのが効果的です。なぜなら、境目が分からないタスクに、優先順位をつけることはできないからです。3つのタスクがあるのに、ぼんやりと1つのタスクだと思っていると、優先すべきタスクを見逃してしまうことになります。
対策|重要度と緊急度から最優先タスクを見つける
有名なフレームワークで、「アイゼンハワー・マトリクス」と呼ばれます。タスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で分解し、優先順位を決めるツールです。
優先順位の定め方はタスクや人によるため一概には言えません。緊急なタスクはすぐやらなければならないし、重要なタスクはちゃんとやらなければならない。それは当たり前だからです。
参考までに、私は次のように優先順位を決めています。とりあえず緊急度の高いタスクから着手し、時間ができたら重要度の高いタスクに移る、というスタンスです。
- 短期的(1日〜1週間レベル)に見ると、「緊急度」が高いタスクの優先順位が高い
- 中長期的(数週間〜数ヶ月レベル)に見ると、「重要度」が高いタスクの優先順位が高い
対策|タスクごとのゴールを決める
タスクごとに、「ここまでやれば終了」というゴールを設定します。例えば、「上司にOKをもらえたら終了」「全体の80%まで完了したら今日は終了」などです。
ゴールのないマラソンは大変。逆にゴールを設定できれば、あとはそこに向かって走るだけです。
対策|タスクに集中する時間を決める
「90分以内に終わらせる」などと時間目標を決めるのも良いでしょう。時間に感覚が集中するので、他のタスクに気が散るのを防いでくれます。
思ったより仕事が早く終わる、という嬉しい効果もあります。
テクニック|物理タイマーで時間を可視化
時間目標を決める場合は、時間を視覚的に捉えられるよう物理タイマーを利用すると効果的です。より時間に集中できます。
スマホのタイマーでもいいのですが、面倒ですし、SNSを開くなど気が散るリスクがあるからです。
対策|定期的かつ効果的な休憩を

定期的に、効果的な休憩タイムを設けましょう。集中力を長時間維持するためです。
無理にタスクを続けようとすると、いつか反動で集中力が切れてしまいます。また、休憩中に他のタスクをしたりスマホを観たりするとあまり休憩になりません。
休憩中は、極力スマホなどを見ず、刺激をゼロに近づけるのがHSP向けのコツです。
テクニック|ポモドーロテクニック
約25分の作業と約5分の休憩で約30分の単位を繰り返すことで、集中的に仕事をするテクニックです。
時間の捉え方を正確にする効果があり、例えば3時間はポモドーロ6回分と捉えることができます。
対策|手書きメモで優先順位を組み立てる

優先順位を組み立てれば、タスクをこなす順番を整理でき、タスクへの集中、タスクの切り替えがうまくいきます。
メモは手書きがおすすめです。
理由1つ目は、頭の中を直感的に書き出せるから。文字だけでなく図形や矢印、丸で囲むなど直感的に書き出せます。情報を整理しやすく、優先順位づくりという目的に合致します。
理由2つ目は、書くスピードが遅いから。意外かもしれませんが、PCやスマホのメモだと入力が早すぎて頭の回転が追いつかず、思考停止に陥りやすいです。手書きなら考えながら書けるスピードなので、頭の整理に最適です。
テクニック|iPadでの手書きメモ
手書きメモには、iPadをお勧めします。
紙とペンだと、1度書いたメモを消せません。
iPadなら、文字を部分的に消したり、移動したりすることができるので、メモとしてのハードルがとても低いのです。
対策|できれば在宅ワークを

デスク周り、照明、匂い、空調をコントロールしようとするなら、在宅ワークが理想です。
他の人が何人もいるオフィスと自分一人の家では、刺激の量がかなり違います。眩しさや暑さ寒さ、匂いという観点でも、自分の家なら最適な環境を作ることができます。
今の時代、在宅ワークが当たり前の企業や業界はたくさんあります。リクナビNEXTなどで調べると、「在宅ワーク」を条件に仕事を探すことができます。転職活動しなくても、いろんな世界があることを知るだけで勉強になると思います。
在宅ワークが難しい場合は、せめてデスクの上だけでも整えておくと気が散る要因を減らせるでしょう。